周りの環境や、交通の利便性などの条件がとてもいいのに、家賃が異常に安いアパート。こうした物件は、ほとんどの人が「何かある」と思いますね。そして、「きっと出るんだ」なんて考えます。夜中に女性の泣き声が聞こえたり、壁に幽霊の姿が浮き上がったり…。怖いお話ではあっても、めずらしくはありません。ただ、今回語るお話は、少し変わったケースかもしれませんよ。
ある都市伝説の本の著者が、友人の体験談として記したお話です。著者N氏の友人でデザイナーのS氏は、幽霊とか超常現象をまったく信じない男性でした。条件は最高でも家賃がとても安いアパートの一室を、「仕事場に近い」という理由だけで借りました。「やめた方がいい」と言うN氏の言葉にも、「俺はそういうの信じないから」と笑っていたそうです。
その部屋で暮らし始めてまもなく、S氏は金属アレルギーになりました。それまで、そんな事は一度もなかったのに、腕時計の金属ベルトの部分が異様に痒くなったのです。痒みに耐えられず掻き壊してしまい、やがて手首の掻き傷がかさふたに変わりました。その赤黒いかさふたが、なんと女性の顔のようだったと言うのです。目鼻や口ははっきりと、しかも目の部分から滲み出る血はまさに涙。薬を塗っても、すぐにまたこの形が浮き出るというS氏の話に、N氏は寒気がしたそうです。
数日後、S氏はついに「伝説」を体験します。突然、女性のすすり泣きが聞こえ、部屋の壁に彼女の姿が現れたのです。翌朝、近所のおばさんから「あの部屋では、女性がふたりも亡くなったのよ」と聞かされ、さすがに怖くなって引っ越しました。壁より先に、住人の手首に現れた女性の霊。おばさんの情報によれば、亡くなったひとりはその部分を切ったそうで、本当に怖いお話でした。