2013年6月10日月曜日

戦慄の吸血鬼伝説


最近のハリウッド映画で、派手なアクションを披露している一族は別にして、現代人が思い浮かべる吸血鬼のイメージは万国共通ですね。人間を襲い血を吸い尽くす。鏡に映らず、日光やニンニク、十字架、聖水を嫌い、その容姿は美しく不老不死。そして身分は高く、ほとんどが貴族階級の紳士とレディです。これはジョン・ポリドリの「吸血鬼」、シェリダン・レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」といった、18世紀から西ヨーロッパで創作された文学や芝居などのエンターテイメントが生み出したイメージです。そのイメージを世界的に広げ、現代でも定番となるほど定着させた作品が、ブラム・ストーカーの「ドラキュラ伯爵」でした。

 
このドラキュラ伯爵には、モデルとなった人物が実在したのはよく知られるお話ですね。15世紀、現在のルーマニア・トランシルバニアを治めていた公爵、ヴラド・ツェペシュです。「串刺し公」の異名を持つ惨忍極まる人物でしたが、彼のほかにもうひとり、血に執着し吸血鬼のモデルといわれた女性が実在しました。ハンガリーの名家に生まれたエリザベート・バートリです。彼女は、自分の美貌を保つには若い女性の血が効くと信じていました。城で働く女性や近隣の村の娘を大勢殺し、その血を風呂に満たし全身に浴びていたそうです。「血の伯爵夫人」と呼ばれ、居城からは600体もの女性の遺体が発見されたといいます。

 
吸血鬼伝説はこうしたエンターテイメントとは別に、実際の事件から語り継がれるようになった「純粋な伝説」があります。ある意味、こちらが本物の吸血鬼伝説といえるでしょう。1725年、ヨーロッパのある村で、亡くなった男性が埋葬されてから10週間後に生き返り、村人を襲ったのです。彼のお墓を掘り返えしてみれば、棺の中の姿は生前のまま、口の周りには鮮血がついていたといいます。この逸話が吸血鬼像の形成に影響を与え、ヨーロッパでは、亡くなった人が吸血鬼になると考えられるようになりました。ただ現実には、密閉された棺の中で生前の姿を保つ事はあり得るのです。1314年に亡くなったある国の王さまは、500年余りが過ぎて移葬のため棺を開けたところ、生前の面影をとどめていたそうです。また医学が現在ほど発達していなかった中世では、可死状態のまま埋葬してしまい、蘇生した本人の声や棺を叩く音が墓地に響いたこともありました。その恐怖が、吸血鬼伝説を生んだのです。

 
太古の時代から、血液は生命力の象徴として崇められてきました。その血で、永遠の命を繋ぐ吸血鬼。暗闇に潜み、自らの運命を悲しみ、そして倒錯した愛を求める姿が醸し出す独特のエロスは、現代人を強く惹き付けます。アメリカのある超心理学者は吸血鬼研究を続けており、実際に439歳の吸血鬼と自称する女性に会ったそうですよ。その言葉の信憑性は別問題としても、21世紀の現代社会の中に、自分は吸血鬼だと信じる人々が存在しているのです。

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